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活動報告

平成22年全国女性建築士連絡協議会の報告

ファイル 174-1.jpg 女性部の参加者全員で
ファイル 174-2.jpg A分科会報告の田井中氏


本年度は、全国女性建築士連絡協議会発足から20年の節目の年。(我が滋賀県建築士会女性部会も同様、発足20年)
梅雨明け早々の暑いあつい東京で「女性建築士の新たなる出発」をメインテーマにその全国大会は開催されました。滋賀県からは7名が参加いたしました。
 7月16日の第一日目は、京都府立大学 宗田好史准教授による「女性とまちづくり」をテーマに基調講演がありました。翌17日には参加者がAからHの8分科会に分かれ、それぞれのテーマごとにコメンテーターによる活動発表と意見交換が行われました。
 「士会活動と女性」をテーマにしたA分科会では滋賀県建築士会の河島さんが20年のあゆみ Doシリーズの記録として№54までの経緯を説明。そのあと伊東さんから「Doシリーズ伝統工法勉強会を通して学んだこと」と題して住まい手・設計者・工務店・大学との協力で大きな成果をあげた伝統工法の5回にわたる研修会の様子を発表していただきました。
 その後全体会でのまとめのコメントがあり、参加者総意による今大会のアピール文が発表されました。
次回全建女は、お隣の京都での開催です。多くの会員皆様のご参加を期待しています。
ファイル 174-3.jpg H分科会の様子
ファイル 174-4.jpg ポスターセッション展示風景

■分科会の報告
○A分科会「士会活動と女性」
 全建女も発足20年。業界の厳しい状況下、士会活動の活性化や変化に応じた対応 新たな取り組みを期待されるなか福島建築士会の菅野真由美さんより「第20回女性建築士の集い これまでも・これからも」と題して発表がありました。福島の女性建築士は支部中心に活動を行い毎年1回県内の女性建築士が集まって1泊2日の合同研修を行ってこられた。今回はとくに東京より手塚貴晴・由比夫婦を招き手作りのお料理で楽しまれた様子で、参加した若い会員にも建築がしたい!とおもわせるモチベーションのあがった講演や楽しい集いの様子で次世代への継続の必要性も含んだ内容でした。
 滋賀県は伊東裕子さんより「DOシリーズ伝統工法勉強会を通して学んだこと」として発表してくださいました。前段で河島が20年のあゆみ DOシリーズの記録として№54までの経緯を説明。そのあと伊東さんから伝統工法の5回にわたり住まい手・設計者・工務店・大学との協力で大きな成果をあげた研修会の様子を発表。女性部会の枠だけでなく多くの会員、非会員が参加して学べ、伝統工法に対してブレーキになっている問題点もクローズアップさせながら
今後の方向性を提起した内容のもので会場からも伝統工法に関しての質問も多くありました。こうしてDOシリーズの見学研修に事欠かないこの滋賀という地や建造物に、全国に向かって発表する機会を得てはじめて恵まれた価値ある環境にいることに気づいたようにおもいます。今後もDOシリーズを積み重ねていただき身近に存在する技術や工法の伝承にも活動していただきたいとおもいました。
                         (河島 記)

○B分科会「環境共生住宅」
 コメンテーターとして福島県の吉田紀子さんと長野県の池森梢さんのお二人が活動報告をされました。福島県の吉田紀子さんは「ふくしまの家地域活性化支援事業」により手がけられた「会津百年スギの家」の取り組みについてお話しされました。「木楽塾」と命名されたモデルハウスは大径材のスギを自然乾燥し、基礎のアンカーボルト以外は金物を使用せず伝統工法で組まれ、構造体とプランを一致させた建物でした。
 長野県の池森梢さんは、近くの山の木を使うことが山の整備につながり、山の機能が保たれることにより里の暮らしが守られる。との観点から、循環型社会への取組についてお話しされました。
使われる材料・職人の手仕事等を知ることで、自分の住まいに愛着が生まれ、生活に変化が生じても変化にあわせて手を入れ長く受け継がれる家ができる事を力説され、お話の中で、建築関係者全てを完成時に招待されたとき、山のきこりさんは、自分が切り出した木材が使われた現場を見たのは初めてだと感激されたそうです。山を知り、里を知り、はっきりと見える繋がりの大切さを確認しまし。
 しかし、近くの山の木を使用するのにコストアップが否めない現状において、大きな問題が山積されているのも事実です。1つの県・1つの地域で解決できる問題ではないので、繋がりを大切にこれからも関わって行きたい課題と再確認しました。
                       (河島美 記)

○D分科会「建築物の再生活用」
 まず、福島建築士会女性部の「環境」をテ-マとした地域貢献活動の報告がなされました。とくにゴミの問題を取り上げ、<中古建材りさいくりんこ>の開催によって、ゴミの減量化、リサイクルによるエコの再認識、また、空き店舗を利用してフリーマーケットを同時開催し、まちづくりの活性化に繋がった事例が発表された。
 次に、'よこはま洋館付き住宅を考える会'の島田氏より活動内容についての発表があり80歳を迎える建物たちの今が折り返し点となるような活動はどのようなものなのかを参加者全体で考えた。
 各地域では、それぞれのグル-プがそれぞれの活動をしている、そのような点と点を結ぶ相互ネットワ-クの構築が今後の活動をより有効なものにしていくのではないかと思われる。
                        (中本 記)

○G分科会「高齢社会と少子化社会」
 コメンテーターとして大阪府建築士会から、3年前より取り組んでいる「シニアライフを楽しむ」というテーマでの活動報告、石川県建築士会からは少子化社会の子育てバリアフリーに着眼した「パパ・ママ・じぃじ・ばぁばが安心して子育て出来る環境」についての検証報告がありました。大阪府建築士会が“豊崎プラザの長屋再生”から学んだ「ちょっと昔の暮らし」に、独居老人問題を筆頭とする現代社会の問題点を解決するヒントにあるとの考察には納得させられました。また、目に見えないバリアフリー、遮音・結露・臭気・温度差など建築士ならではの視点で住環境を更に検証しようとされる姿勢には分科会参加者全員が賛同しました。
 石川県建築士会の公共施設の検証法は、“子供目線に立つ”工夫が見事で感心しました。が、危険・・・と判定しあらゆる危険因子を排除された環境におかれる子供たち・その環境はベターと言えるのだろかとの問題提起もありました。
社会問題も理解して住環境を提唱していく建築士の姿を学びまし。
(市川 記)

○H分科会「集まって住む」
 コメンテーターに東京都港区の借り上げ住宅の第1号「小林ポートハウス」に関わられた、東京建築士会の中野晶子氏を迎え、事業に関わった経緯と現在のオーナー、港区、店子さんの関係をまちづくりの観点からご報告していただきました。港区は昼の人口が夜の5倍という特殊な地域であり、1990年頃から人口減少に悩んでいました。区では1994年人口流出を食い止める住宅政策として、借り上げ住宅制度を設け、地域に根ざしたオーナーを厳選し、家賃補助や空室補償を区が行うことで、貸す側も借りる側にもメリットのある制度を形成しました。そして18年の歳月をかけて人口をほぼ元にもどす事に成功した現在、この政策は役目をおえました。
 意見交換では、高齢者住宅やコーポラティブ住宅に関わった人や、建物だけではなく町や地域づくりを通して色々な形の「集まって住む」にかかわる人の活発な意見が出されました。
                        (大村 記)

■平成22年全国女性建築士連絡協議会 アピール
                 社団法人日本建築士会連合会
                         女性委員会

 全国女性建築士連絡協議会は、平成2年に第1回が東京で開催され、その後各地域で毎年継続しながら、参加者数も年々増加し、今年で第21回目を迎えました。発足当時は、男女雇用機会均等法制定や女性の社会進出などの社会の動きはありましたが、必ずしも簡単な船出ではありませんでした。活動が持続できたのは、建築士であり、女性であり、生活者である視点が地域社会にも求められている、という信念を持ちながら、全国の女性建築士が、実践活動を通して継続的に提言を行ってきたからです。
 今年は、節目となる年を契機に、「女性建築士の新たなる出発」というメインテーマを掲げ、この20年を振り返り、将来を考える記念すべき協議会にいたしました。
 1日目は、全体会として、約350名が集まり、基調講演とパネルディスカッションを行いました。基調講演は、京都府立大学 宗田好史准教授をお迎えし、「女性とまちづくり」と題し、女性の力に着目して社会の女性化についてお話頂きました。
 パネルディスカッションでは、歴代の連合会女性委員長に加え、女性建築士に応援を頂いている大阪府建築士会会長をお迎えし、「これからの女性建築士のめざす道」というテーマで討議しました。女性建築士として求め突き進んできた20年を振り返り、これからの女性建築士の担うべき役割を模索いたしました。
 2日目は、分科会として、「士会活動と女性」、「環境共生住宅」、「健康住宅と素材」、「建築物の再生活用」、「歴史的な建物とまちなみ」、「子供と住環境」、「高齢社会と少子化社会」、「集まって住む」の8つのテーマのもとにそれぞれ熱心に討議を進めました。
 これらの成果として、以下の3点を今年のアピールとして発表します。

1.私たちは、今回の協議会を通し、女性建築士として、生活や地  域に密着したきめ細かい実践活動を行う専門家として、子供や  高齢者が安心して生活をおくることができる、環境に優しい   「くらしづくり」を提案していきます。

2.私たちは、今回のパネルディスカッションを踏まえ、女性建築  士の役割・社会的責任の大きさを再認識し、経験と知識の幅を  広げ、これからの将来を担う女性建築士の育成・サポートをす  ると共に、まちなみの活性化や豊かな住環境の構築に努めま   す。

3.私たち女性建築士は、継続的な活動を通して、地球規模の環境  保全、人が触れる素材や空間環境に着目し、各地域の素材を纏  め「ニッポンの建築素材」として出版いたしました。今後も環  境問題や地産地消の取組みを積極的に行い、社会に貢献してい  きます。
                            以上

ファイル 174-5.jpg B分科会風景